風景写真に人物が「偶然写り込んだ」と言えるのはどういう状況か考えてみた
「風景写真に偶然写り込んでしまった人物に関する許可について」の記事を書きました。
その記事では「偶然写り込んだだけなら、顔を消したり本人が識別できないように刷ることが必要。」「偶然写り込んだといえない場合は、そもそもNG」と考えられる、と結論づけました。
では、今回は「偶然写り込んだ」とはどういう状況なのか、ということについて書きたいと思います。
なお、これについては定量的に「こうだ」ということは難しいので、あくまで一つの考え方の提案として捉えてください。
「映り込み」に関しては、文化庁のWEBサイトに参考になる解説がありますので、これを参照したいとおもいます。
この規定は「著作権」に関するものであって、「肖像権」に関してのものではありません。しかしながら、映り込みの程度を考えるにあたってかなり参考になります。
これを抜粋すると次のようになります。
(付随対象著作物の利用)
第30条の2 写真の撮影,録音又は録画(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によつて著作物を創作するに当たつて,当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は,当該創作に伴つて複製又は翻案することができる。ただし,当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製又は翻案の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない。
法律用語なので難しいことが書いてあるんですが、要は「他人の著作物が、でっかく写り込んでいるのはダメだけど、ちょこっとだけ目立たなく写ってるんだったらOKだよ」ということのようです。
さらに、上記から抜粋すると
写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)
とあります。
この「軽微な構成部分」というのがポイントになるでしょう。
つまり、写り込んでる著作物が主題に見えるようなものはダメ、ということでしょう。
これを人物で考えてみます。
たとえばこの写真に写っている人物は、かなり小さく写っていますし、人物そのものに意味があるようには思えません。このため、「軽微な構成部分」と言えます。なので「偶然写り込んだ」と言えるでしょう。
なお、この写真を拡大していただけるとわかるかと思いますが、ナンバープレートも人物も識別できないようにしてあります。
では、次の写真を見てみましょう。銅像を人物と見立ててください。写真に対して「軽微な構成部分」とは言えないのではないかと思います。
では、どこからどこまでが「軽微な構成部分」のうちに入るのでしょうか。
私が風景写真を撮る場合で人物がどうしても写り込む場合、次の基準を考慮に入れています。
- 写真からその人物個人を取り除いても、その写真が成立すること
- その人物個人が、写真の主たる構成要素を成していないこと
上記の両方が「Yes」となる必要があると考えています。
たとえば、「雑踏の中で一人だけある人物が特定の方向を向いている」写真を考えてみましょう。おそらく、その一人の人物がなければ写真が成り立たないでしょう。つまり「軽微な構成部分」を成しているとは言えないと思います。
このような写真を撮りたければ、少なくとも一人の人物に関してはモデルを雇ったほうが良いでしょう。
いかがでしょうか。風景写真に人物が「偶然写り込んだ」といえるのはどういう状況か、考えてみました。
参考にしていただければ幸いです。