はせこう写真館

はせこう(@hasekou)の写真に関するブログです。

風景写真に偶然写り込んでしまった人物に関する許可について

 コスプレやポトレ撮影時の許可に関しての記事第2段です。

 今回は、「風景撮影時に『偶然写り込んでしまった』人に撮影・掲載許可が必要か」ということに関して書きます。
 なお、「偶然写り込んだ」といえない写真については、今回の議論から除外します。

 


結論から書くと、

  • すくなくとも、顔が写っていたり個人が特定できる写真はNG
  • じゃあ、顔が写っていなければOKか、というと、そういうわけでもない

ということのようです。

 

 「ようです」という曖昧な書き方をしているのは、私自身が法律の専門家でなく、また法律や判例を考えても確実にこうであるということが断定できないからです。なので、最終的な判断はご自身でなさってください。


 よい作品をつくるにあたり、この問題について考えることは避けて通れません。

 私もいくつかの風景写真を撮影し、SNSにアップロードしていますが、そのなかには人物が映っているものが多くあります。写真に写っている人すべてに許可をとっているかというと、残念ながらそうではありません。


 巷には、「顔がわからない状態であれば許可不要」という認識もありますが、ちょっと乱暴な気がします。


⚫胸を張って公開できるか考えよう

 今回は許可のOK/NGというより、「胸を張って公開できるか」という観点で考えてみたいと思います。

 コスプレを含め撮影するときの許可に関してですが、基本的には撮影場所の管理者、被写体の人物と、被写体となる構造物の管理者など、被写体となるものの関係者すべてに許可を取るべきです。
 しかしながら、なかなかそういうわけにも行きません。

 

 許可を取っていれば、堂々と胸を張って公開できるでしょう。

 

 許可を取れない場合は、写り込んでしまった人物に関して、いかに対策をしたかという考え方をしてもよいでしょう。どのように対策すればよいのかは、法律の解釈に助けを求めるとよいでしょう。

 

⚫肖像権

 人物の映り込みに関しては「肖像権」という権利で取り扱うことになります。肖像権は、「無断で写真や動画等を撮られたり無断で公表されない」権利です。

ja.wikipedia.org

 

 つまり、風景に偶然写り込んでいたとはいえ、写り込んでいる個人は肖像権を主張できるのです。
 肖像権があるかぎり、写り込んでいる人物に無断で撮影したり、撮影した写真を公表することはNGでしょう。仮に撮影・公開した、写り込んでいる人物にその写真の公開を停止・削除を求められるかもしれません。

 たとえば、あなたの顔がはっきり写り込んでしまっている写真が撮影されSNSで公開されて、万が一にもバズってしまったら困りますよね。この場合には公開の停止・削除を求めることができます。

 逆の立場でも、また然りです。このような写真を撮りたければ、事前に許可を得なければならないでしょう。

 

 

⚫受忍限度

 たとえば、風景写真に偶然写り込んで、しかも米粒のように小さい映り込みでも、肖像権を主張できるのでしょうか。
これも、少々乱暴なように見えます。

 そこで、「受忍限度」という考え方が登場します。受忍限度とは、「それくらいだったら、我慢できるっしょ」という我慢の度合いのことです。これはその他のいろいろな場面でも導入されている考え方です。

 権利はあるけどそれをすべて認めていたらキリがないから、「社会生活上受忍すべき」限度で我慢してね!!ということになります。なぜ我慢しなければならないの?と思いますが、「公共の福祉や文化の発展と向上」を優先するという考え方です。


 つまり、「たしかに写り込んでいるけれど、これぐらいだったら悪いけど我慢してね。」ということです。

 では、どの程度だったら「受忍限度」が認められるのでしょうか。

 

 これは、「個人が特定できるか」という基準で判断することが一般的なようです。少なくとも顔が写っていれば「個人を特定できる」と言えそうです。逆にいうと背中が写っていて顔が写っていなくて服もどこでも売っているようなものだと、「個人が特定できる」とは言えなさそうです。


 さて、長くなりましたが、「顔が写っていないから許可不要」というのは正しいとは言えないように思われます。
 「『顔が写ってないので、大変恐縮ではございますが、我慢してもらえるとありがたいです』とお願いすることが法律上認められている」といったほうが正しいのではないでしょうか。もちろん、お願いするだけなので、映っている人が「イヤだ」という可能性もあります。

 「我慢してね!!」とお願いする方の立場としては、それを認めてもらうのに、相当の努力をしなければなりません。たとえば、顔の部分をモザイクやボカシで処理をして、顔を判別できないようにする、などです。
 「マスクとかマフラーで顔が隠れているからOKっしょ?」という意見もあるようですが、すこし乱暴なように思われます。作品を公開するなら、先述のような処理をして顔がわからないようにすべきですし、そのように「努力をした」形跡を残すべきだと考えられます。

 そうすれば、「たしかに元の写真には顔が写り込んでいますが、ボカシ入れて見えないようにしているし、今回はこれで勘弁してください」と主張することができますし、万が一、裁判で訴えられたとしても受忍限度が認められる可能性も出てくるでしょう。


 「いや、顔にボカシいれるとかありえないし!!そしたら写真が成り立たなくなるじゃん!!マスクしているしボカシとかいらないっしょ」という場合もあるでしょう。しかし、例えば、顔にボカシいれると目立つくらい、顔が写真の主体として目立っているのであれば、それはモデルを使って撮影すべきじゃないでしょうか。映っている人の許可を取らないのは乱暴な気がします。

 

⚫結論

 風景写真に人物が写り込んだときの対処ですが次のようなことが考えられます。

  • そもそも顔が写っている風景写真を撮らない
  • 写り込むとしても、小さく目立たなく写り込むようにする
  • もし写り込んでしまったら、顔にモザイク・ボカシ処理して個人を判別できないようにする

 

 それができないのなら、写り込んだ人に撮影と掲載の許可をもらうようにしましょう。

 

⚫訴訟リスクについて

 冒頭で「胸を張って公開できるようにしましょう」といいましたが、そのような対策をすることで訴訟リスクもかなり低減できると考えられます。
対策のメリットは十二分にあると考えていいでしょう。

 

⚫私の場合

ちなみに、私の場合は風景写真を撮る場合どうしているか、というと

  • 人がハケたタイミングで撮る
  • 顔が写っている写真は選定しない
  • 万が一、顔が写っていればボカシ処理をする

を心がけるようにしています。

これで、胸を張って写真を公開することができます。
(ほんのすこしの、訴訟リスクに怯えながら)